揺らぐ科捜研鑑定の信頼性、“「278億分の1」の虚構”で犯人とされる恐怖

もしあなたが、「科学的鑑定」によって犯人とされ、不一致は「278億分の一の確率」と言われたら?
郷原信郎 2026.02.25
誰でも

科学的鑑定という名の「ブラックボックス」

刑事裁判において、警察組織に属する科学捜査研究所(科捜研)の鑑定は、かつて「疑いようのない真実」を告げる「神託」のような存在でした。防犯カメラの映像、指紋、そしてDNA。これら「科学的証拠」が一つ提示されれば、被告人の否認は「往生際の悪い言い逃れ」と見なされ、有罪への決定打となってきました。

しかし今、その「科捜研神話」が根底から崩壊しつつあります。

乳腺外科医事件」は、2016年に東京都足立区の病院で、右乳腺腫瘍の摘出手術を受けた女性患者が、全身麻酔から目覚めた直後、執刀医から左胸を舐められるなどの被害に遭ったと訴え、外科医が起訴された前代未聞の「医師による準強制わいせつ事件」でした。

警視庁は女性の訴えに基づき、医師を逮捕。検察側は女性の胸から検出されたDNAとアミラーゼ反応を「動かぬ証拠」として起訴しました。

一審の東京地裁は、麻酔薬による「術後せん妄(幻覚)」の影響を認め、DNA鑑定の証拠能力に疑問を呈して無罪判決を出しましたが、二審の東京高裁は、女性の証言を「具体的で合理的」と高く評価。DNA鑑定の結果を絶対視し、懲役2年の実刑判決を下しました。

最高裁は、二審判決には「重大な事実誤認の疑いがある」として審理を東京高裁に差し戻し、2025年3月、差し戻し後の控訴審において、 検出されたアミラーゼはごく微量であり、唾液の付着とは断定できないこと、検出されたDNAは、診察時の会話や触診による付着(飛沫など)で説明が可能であること、女性の体験は、麻酔薬による性的幻覚を伴う術後せん妄によるものである可能性が極めて高いことなどを理由として、無罪判決が言い渡され、確定しました。「医学的知見の無視」と「科学的鑑定の誤用」が招いた現代の冤罪事件でした。

この事件に関しては、再現可能性、検証可能性のない証拠の許容性、科学捜査研究所(科捜研)という警察内部の機関が刑事事件の事実認定に決定的な影響を生じさせる鑑定を実施することの是非、科学を無視した裁判所の判断をいかにして防止するか、などが問題となりました。

2024年に発覚した「佐賀県警科捜研の不正」では、一人の技術職員が、7年余りにわたってDNA型鑑定などで虚偽の書類を作成し、データを捏造していたことが明らかになりました。科学を扱う「人間」や「組織」が、自らの都合でデータを書き換え、司法を欺いていた事実は、鑑定の独立性と信頼性を根底から覆すものでした。

今、日本の刑事司法が直面しているのは、科学的鑑定という名の「ブラックボックス」に対する深刻な疑念です。

工具痕鑑定の信用性に根本的な疑問を呈示した高裁判決

侵入窃盗等の事件で犯人性の立証の決め手とされてきた「工具痕鑑定」について、その証拠価値を根底から否定する司法判断が出されました。科学的鑑定とされる証拠について、科学の専門家である鑑定人が、科学的評価について誤った証言を行い、それを検察官が犯人性の立証に用いることが冤罪につながることの恐ろしさを示すものでした。

この事件の被告人A氏は、侵入用工具を所持していたとして逮捕され、「工具は経営していた専門学校の建物の補修に使用する目的だった」と弁解しましたが、不合理だとされて勾留され、その後、その所持していた工具と同一の工具が使われたとされる「事務所荒らし」の窃盗・窃盗未遂で次々と起訴されました。被害現場からA氏のDNAが検出されたとされた2件を含め14件の起訴が完了し「常習特殊窃盗」に訴因変更されるまでに、逮捕から1年4か月余りかかりました。

A氏は14件すべてについて無罪を主張して争い、1審の審理期間は3年余に及びましたが、工具痕鑑定などの証拠で全面有罪判決が出されました。一審では、A氏が所持していた工具の工具痕と被害現場で採取された擦過痕が同一との鑑定(工具痕鑑定)が犯人性の決め手とされ、起訴事実の14件の窃盗・窃盗未遂すべてが有罪とされ懲役9年の判決が出されていました。工具痕鑑定がDNA鑑定や指紋鑑定のように、統計的・確率論的に裏付けられるものだとすれば、それだけで「犯人性を立証できる証拠」となります。

一審判決は、

「(鑑定人)自身の実験結果及び統計学の公式によって導かれたものであって、一応の合理的な根拠がある」

と判断し工具痕鑑定しか犯人性についての証拠がない事件も含め、14件の起訴事実の窃盗・窃盗未遂について全て有罪とする判決を下していました。

私がこの事件の控訴審の弁護を受任し、控訴趣意書作成のために工具痕鑑定に関する資料を収集していたところ、検察官が「捜査研究」という捜査官向け書籍に寄稿した解説で、工具痕鑑定の鑑定結果に全面的に信用性を認めることに疑義を示す裁判例(東京高裁令和元年8月8日判決)が紹介されていることがわかりました。公刊物未搭載で判決の詳細は不明でしたが、控訴趣意書で、その高裁判決の存在を指摘したところ、控訴審裁判所が検察官にその判例を取り寄せるよう要請し、検察官から証拠提出されました。

東京高裁判決が否定していた工具痕鑑定の統計的確率論根拠

この東京高裁判決(以下、「別件高裁判決」)は、工具痕鑑定に関して、分析・評価の過程において判別者の主観が入る余地があることを指摘し、A氏の事件で工具痕鑑定の統計的確率論的根拠として証拠とされていた「研究報告」についても、

「本件バールと同種の別のバールでも同じ線条痕が偶然形成される可能性について、極めて小さな確率であるとする福岡県警科捜研の研究報告は、本件各擦過痕が本件バールによって印象されたものと認められるとの工具痕鑑定の最終判断を裏付けているとは考えられない」

との判断を示していました。その上で、

「工具痕鑑定は、各擦過痕と本件バールによる印象痕との「類似性」を認める証拠にはなり得る」

として、工具痕鑑定以外に被告人の犯人性に関する多くの間接証拠があった当該事件に対して、証拠を総合的に判断して有罪との結論を維持していました。

この事件の控訴審では、工具痕鑑定を行った警視庁科捜研の鑑定人の証人尋問が行われていました。その鑑定人は、工具痕鑑定について、

「表れている痕跡の幅全般にわたって、条線が対応することが符合と『判断する』ものであり、指紋鑑定、DNA鑑定のように『比較対象とする箇所が特定され、特定の塩基配列と決まっているもの』とは原理的に全く異なります。一定の幅の線条痕が一致しているから、ほかの全体も一致しているという統計的に確立した手法はありません」

と明確に証言していました。

同判決では、鑑定人が、特徴点として、条線の幅だけでなく、形、配置、高さ、方向、間隔のランダムさについて説明する証言を行ったとされており、判決では、「鑑定人の当審証言には相応の根拠、合理性が認められる」との理由で、「高い類似性が認められるという限度での信用性」を認めています。工具痕鑑定の性格について、指紋鑑定、DNA鑑定のような統計的確率的根拠はないことを認めつつも鑑定技法を真摯に説明する証言態度が、鑑定結果には「高い類似性が認められる」という一定の評価につながったと考えられます。

ところが、A氏の事件で工具痕鑑定を行った鑑定人T氏の一審証言は、

「基準としてバーコードの特徴がきれいにもう一致していると言えるほどぴたりと合致しているかどうかを判断しました」

などと述べているだけで、その判断基準に凡そ客観性がありません。それにもかかわらず、自らが行った福岡県警科捜研の研究報告を持ち出し、

「異なる工具で一致と判断される確率は 278億分の1」

という実験結果を紹介し、工具痕鑑定は、それと同じ基準で同一性を判断したなどと証言していました。

T氏が行った工具痕鑑定が犯人性の決め手となった12件について、A氏を有罪とする十分な証拠がないことは明らかでした。

福岡高裁控訴審判決での12件の窃盗の「無罪」

福岡高裁でのA氏の控訴審では、工具痕鑑定の鑑定人T氏の再度の証人尋問の実施が決定され、検察官は証人尋問に先立って、T氏から改めて聴取し、その内容を録取した検察官調書を証拠請求しました。

その調書で、T氏は、

「鑑定人は、その経験から、現場の状況を確認することで工具の使用方法や工具痕の形成過程について見当をつけることができます。」

と述べた上、

「その見当に基づき」「できる限り作成条痕が現場条痕と同一になるよう繰り返し実験して」

などと述べて、恣意的に「工具痕が符合する」との鑑定結果を導こうとしていることも認めていました。その上で

「作成条痕と現場条痕を比較顕微鏡を用いて見比べて、その特徴の同一性を鑑定人が確認するのですが、その同一性の判断はもちろん主観的判断といわれればそのとおりです。」

などと述べ、「同一性の判断」が主観的な判断であることを「自白」する内容でした。T氏の再度の証人尋問を行えば、工具痕鑑定が主観的で恣意的なもので、科学的鑑定とは言い難いものであることが白日の下に晒されるはずでした。

ところが、その後、T氏は、精神面の不調を来たし、抑うつ状態と診断され、証人としての出廷が困難となり、証人尋問が予定されていた公判期日は取り消され、結局、病状は回復せず、証人尋問決定は取り消されました。

控訴審判決は、以下のとおり、別件高裁判決の判示を引用した上、その判示を踏まえて、工具痕鑑定は指紋やDNA型の鑑定のように犯人性の決め手として使うことはできないとの判断を示し、12件については無罪とされ、懲役9年の一審判決は破棄されて4年に減刑されました(常習特殊窃盗は14件全体で一罪なので、主文ではなく理由中で無罪)。

本件の工具痕鑑定は、被告人が所持していた工具により被害事務所に残された工具痕が形成されたことを認定できるほどの高い推認力は有せず、せいぜい、類似性が認定できるにとどまる。
工具痕鑑定を犯人性認定の情況証拠の一つとした東京高裁判決の事案とは異なり、本件では、原判決は実質上、工具痕鑑定を決め手として被告人を犯人と認定しているのであるから、工具痕鑑定によって犯人性を認定し得ない以上、これらの事実について、被告人を犯人と認めた原判決の結論を維持することはできず(工具ごとに固有の特徴を有する線状の工具痕が生じることを原理とする工具痕鑑定を、 指紋やDNA型の鑑定のように犯人性の決め手として使う以上、合理的な疑いをいれない程度に、当該工具痕が、被告人の所持する工具によってのみ形成が可能であり、他の工具では形成し得ないといえなければならない。)、これらの事実に関する工具痕鑑定が信用できることを前提として、各事実について、被告人を犯人と認めた原判決の結論も維持できない。

A氏は、一審での公判審理期間を含め未決勾留日数は5年を超えていました。控訴審での未決勾留日数の法定算入(原判決破棄の場合は、控訴審での未決勾留はすべて算入される)を含めると4年の刑期を超えたので、A氏は判決言渡しと同時に釈放となりました。

有罪とされた2件の特殊窃盗について唯一の犯人性の証拠とされたDNA鑑定についてもその採取過程等に重大な疑義があり、また、この2件の被害は7年も間隔が空いていて、それらが「常習として」行われた犯行であることの事実認定は全くなかったので、上告して全面無罪を主張しました(検察官は上告せず)が、憲法違反、判例違反の上告理由に該当しないとして棄却され、懲役4年の判決が確定しました。

国と福岡県に対する国家賠償請求訴訟の提起

控訴審で、A氏のDNAが検出されたとされた2件の窃盗だけで常習性を認め、4年の懲役が維持されたことの理由に、それ以下の量刑だと、5年の身柄拘束が不当勾留となり、裁判所の責任が免れなくなることがあったと推測されます。

結果的に、A氏は、5年間も身柄を拘束され、その大半が、最終的な司法判断で信用性が否定された工具痕鑑定を根拠とするものでしたが、それに対して、警察からも、検察からも、謝罪も補償も何もありません。そのことに到底納得できるものではありませんでした。

控訴審の弁護を受任した私が、たまたま現職検察官が書いた解説で別件高裁判決が紹介されていたのを発見し、控訴趣意書で引用したことが工具痕鑑定の信用性を崩すきっかけとなりましたが、それがなければA氏は9年の実刑が確定し、今も服役が続いていたはずです。

しかも、A氏の事件で工具痕鑑定を行った鑑定人のT氏は一審の証人尋問で、同種の工具痕鑑定を、

「過去に500件は行っている」

と証言していました。

その工具痕鑑定が有罪立証に用いられた事例の中には、工具痕鑑定以外に犯人性の証拠がない事例もあった可能性があります。別件高裁判決と、A氏に対する福岡高裁判決と相次いで示された工具痕鑑定に対する一般論を根拠に再審請求が行われれば無罪となるべき冤罪事件です。そのような事例がないかどうか、福岡県警や検察が再検討するのが当然ですが、そのような対応が行われている様子は全くありませんでした。

A氏の一審の公判担当検察官は、別件高裁判決の判示を踏まえ、工具痕鑑定による立証について再検討すべきだったのに、工具痕鑑定しか犯人性の証拠がない事件についても従前どおりの方針で工具痕鑑定に科学的根拠があるとの前提での立証を維持し、T氏に証人尋問でそのような趣旨の証言をさせました。T氏も、検察官の意向に沿い、一審裁判所に統計的確率論的根拠があるように誤解させる証言を行いました。科学的専門知識を有する鑑定人として、鑑定の性格、その限界を認識していたのですから、そのような証言を行うべきではありませんでした。

これらの問題について、A氏は、検察(国)と福岡県警(福岡県)に対して国家賠償請求を提起しました。工具痕鑑定という「科学的鑑定の虚構」に対する問題提起を行うことが目的でした(この国賠訴訟の経過と原被告双方の主張については【「科学的鑑定」に対する“刑事司法の在り方”を問う工具痕鑑定国賠訴訟】参照)。

 しかし、被告国は、

「別件高裁判決は、工具痕鑑定の統計学的な根拠に疑義を呈していない」
「工具痕鑑定の統計学的な検討結果に対して相応の評価をしている」

などと判決の趣旨を正しく捉えない主張を行い、被告福岡県は、

「T氏の証人尋問での個別の証言についての『偽証』を主張していないので、不法行為にはならない」

などと主張しています。

研究報告を行ったこと、所定の手法で工具痕鑑定を行ったことなど個別の質問に対するT氏の証言は、事実としてはその通りであり、個別の証言自体は意図的な偽証とは言い難いでしょう。しかし、そのような証言が、全体として、工具痕鑑定の証拠としての評価に関して誤った認識を生じさせようとする意図で組み立てられていることが、科学的鑑定を行う立場の専門家としての義務に違反していることが問題なのです。

国賠訴訟が果たすべき「公務執行の適正担保機能」

検察官による公権力の行使についての「国賠法上の違法性の判断基準」のハードルは高く、また、警察の科捜研の鑑定人が、鑑定結果の科学的評価に関する証言で不法行為責任を問われた例も過去にはありません。いずれも、最終的に公務員の不法行為について賠償請求が認容される可能性が高いとは言えないことは確かです。

しかし、国家賠償請求訴訟は、単なる金銭的な「被害救済」の場にとどまりません。国家賠償制度は、被害者救済機能・損害分散機能と制裁機能・違法行為抑止機能・違法状態排除機能の両面を有するとされており、公権力の行使における「適正な手続き」を検証する、公共的な監査(チェック)機能を果たすべきであることが、かねてから指摘されています。

「国家賠償ないし不法行為に基づく損害賠償制度の趣旨を、被害者の純経済的救済という点のみに止どめることなく、これに公務執行の適正を担保する機能をも営むものとして理解することは、必ずしも、右制度の趣旨を不当に拡大したものとはいえない」

と判示した裁判例もあります(札幌地判昭和46.12.24)。

本件では、12件もの窃盗事件で犯人性を証明する決め手とされ、被告人の長期間の身柄拘束の根拠とされた上に、一審判決の誤判の原因となった工具痕鑑定について、その「科学的根拠」自体を疑問視する控訴審裁判所の判断が出され、確定したのですから、そのような鑑定を公権力の行使に用いることに関して違法の疑いが生じたことは否定できません。

かかる司法判断を受けて提起された国賠訴訟においては、刑事裁判における公正の確保、同種の鑑定による冤罪の防止という観点から、誤った一審判決の判断の重大な原因となった検察官の対応と「科学的良心」に反する鑑定人の対応に関して、説明を尽くさせ事実を明らかにさせ、その上で、違法不当な公権力の行使であったかどうかの評価が行われるべきです。

自由心証主義と「科学的鑑定」

刑事訴訟法第318条は、

「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる」

として、刑事裁判における自由心証主義を定めています。しかし、裁判当時の「最新のDNA鑑定」が有罪の決め手となったものの、後に鑑定精度の低さが露呈し、「再審無罪」となった足利事件からも明らかなように、科学的鑑定にも常に「誤謬の危険」があります。それを、科学的専門知識を有しない裁判官が看破することは困難であり、そのような自由心証主義の「科学的限界」が誤判・冤罪につながる危険が存在します。

その危険が現実化することを防止するためには、科学の専門知識をもって鑑定に臨む鑑定人の「科学に対する良心」と、あらゆる情報を収集して立証活動を行い得る検察官の「誠実さ」が前提として重要であることはいうまでもありません。

専門的知識を持つ鑑定人の刑事裁判に対する義務は、個別の断片的な事実を証言するだけではなく、その『科学的評価を正しく伝えること』にあります。本件では、そのような立場にある検察官と鑑定人が、別件高裁判決の判示をどのように認識し、どのように考えて、A氏の公判での証人尋問に臨んだのか、それらを明らかにすることは、「科学的鑑定」に対する検察官、鑑定人の対応の在り方を論じる上でも極めて重要です。

別件高裁判決は、警視庁科捜研の工具痕の鑑定人が「科学的鑑定としての限界」を率直に認めた上で鑑定技法について説明する真摯な証言をしたことを、(工具痕相互の)「高度の類似性」という面で相応に評価をしました。統計的確率論的な根拠があるように見せかけて裁判所を誤信させようとする福岡県警科捜研のT氏の証言態度とは、あまりに大きな違いがあります。

そして、改めて問われるべきは、工具痕鑑定についての二つの高裁判決を受けての福岡県警の対応です。別件高裁判決に続いて、A氏に対する福岡高裁での控訴審判決で、工具痕鑑定には、

「被告人が所持していた工具により、被害事務所に残された工具痕が形成されたことを認定できるほどの高い推認力は有せず、せいぜい、類似性が認定できるにとどまる」

との判断が示され、確定しているのであり、当然のことながら、それを受けて、これまでの鑑定による冤罪の有無を確認するとともに、工具痕鑑定の取扱いに対する実務の見直しも行うべきですが、そのような対応が行われている様子はうかがえません。このような現状を、このまま放置しておくことが、果たして、社会的に許されるのでしょうか。

本件で問われているのは、特定の手口の窃盗事犯で用いられてきた工具痕鑑定だけの問題ではありません。科学的鑑定の信頼性、精度を高め、誤判・冤罪を防止するという課題に対する、国として、社会としての姿勢です。

衆議院選挙の結果、国会は与党勢力に一極化され、スパイ防止法の制定など、人権侵害の危険のある立法に対して歯止めがかからなくなる可能性があります。こうした中で何より重要なことは、刑事法令の運用、罰則適用を行う捜査機関に対する信頼性です。「科学的鑑定」の客観性の確保は、そのためにも極めて重要です。

もしあなたが、「科学的鑑定」によって犯人とされ、不一致は「278億分の一の確率」と言われたら?

その恐怖は、決して他人事ではないのです。

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