今後の発信についての問題意識

書きたいことを整理してみました。
郷原信郎 2025.08.17
誰でも

8月14日に配信したニュースレター【現在の病状について】で書いたように、まだまだ先の見えない闘病の中で、その時々の病状、体調に応じて、可能な範囲で、私自身のこれまでの戦いの延長として、どうしても世の中に言っておきたいことの発信は行っていこうと考えていることをお伝えしました。

そこで、「自分なりに、今、どうしても世の中に言っておきたいこと」が何か、ということを整理しながら、発信していきたいと思います。

私は「権力との戦い」を標榜してきました。

戦ってきた「権力」とは、第1に「国政における政治権力」、第2に、検察、裁判所という「司法の権力」、第3に、地方自治体における「首長の権力」、第4に、「メディアの権力」と整理できます。

第1の「国政の政治権力」については、独自の視点から歴代の政権批判を行ってきました。

第二次安倍政権下での「森友学園問題」「加計学園問題」「桜を見る会問題」等については、2024年に公刊した(【単純化という病 安倍政治が日本に残したもの】)(朝日新書) では、第2次安倍政権以降、官邸に権力が集中した結果、「法令遵守と多数決ですべてが決まる」風潮が定着したことによる行政、司法などのあらゆる組織への弊害を指摘しました。

第2の「司法権力」については、検察官としての現場の捜査の中で、特捜部の従来の捜査手法に重大な違和感を持ち、地方の検察で独自の捜査手法に取り組んできたことが私の原点であり、それらの経験をベースに、刑事事件に関する有識者として、「検察の在り方検討会議」の委員など、様々な場で自論を述べてきました。

私にとって、ライフワークと言ってもいい「検察の在り方」「刑事司法の構造問題」が上記第1の「国政の政治権力」に重大な影響を及ぼした直近の事例が、「自民党派閥政治資金パーティーをめぐる裏金問題」です。

「裏金」は、検察の捜査の現場で、「自民党長崎県連事件」を始めとする政治資金規正法事件などにおいて徹底して取り組んできたこともあり、今年4月に公刊した【法が招いた政治不信 裏金・検察不祥事・SNS選挙問題の核心】(KADOKAWA)の中で、私の経験も含め、政治に関連する検察捜査の在り方を含めて様々な角度から論じました。

第3の地方自治体における「首長の権力」との戦いの中で最大のものは、ロンドン在住の作家黒木亮氏等とともに「カイロ大学卒業」についての経歴詐称疑惑を追及してきた「小池百合子東京都知事」に対する2024年7月の都知事選での落選運動でした。

「落選運動」に最初に取り組んだのは、2021年の横浜市長選挙での山中竹春候補に対する運動でした。(この時は、コロナ禍で、偽りの「コロナ専門家キャンペーン」などのために、パワハラ、経歴詐称等を指摘した落選運動での当選阻止はできませんでしたが、「落選運動」については、同年10月衆院選神奈川13区で、当時の甘利明自民党幹事長を小選挙区落選に追い込んだ実績があります。)

2024年都知事選では、全国の皆さんからの支援もあって大量の落選運動チラシを配布することができ、街頭演説などでも徹底して小池氏批判を行いました。結果としては、前回の都知事選から比べて得票を相当数減らすことができましたが、小池氏圧勝に終わったことは ご存知の通りです。

日本の地方自治法上、大統領的な強大な権限を持つ「首長の権力」の問題を、「小池都知事落選運動」で改めて強く認識させられたこともあり、その後、「首長の違法行為の刑事告発」という形で、長崎県大石賢吾知事、兵庫県斎藤元彦知事に対する公選法違反等の告発などを行ってきました。

今年8月の横浜市長選挙でも、山中竹春氏の再選阻止を目指して全力を上げるつもりでしたが、残念ながら、今回の体調悪化のために、横浜市旭公会堂で行った「横浜市に法と正義を取り戻す」講演会と 「特別コンプライアンス条例」の策定・公表だけに終わらざるを得なかったことは、先日「病床からのメッセージ」でお伝えした通りです。

第4の「メディアの権力」の問題については、政治や司法の権力との関係で、権力側におもねり、しばしば権力の手先のような存在になってしまうのが、全国紙、地上波テレビなどの従来型メディアです。

とりわけ、情報を独占する捜査機関や刑事司法機関との関係では、マスコミによる監視・批判機能が十分に機能しないことは、重大な問題です。

私は、東京地検特捜部での経験をもとに、司法記者と検察との利益共同体的な関係から生じる「特捜の暴走」の問題を描いた推理小説【司法記者】(講談社文庫)をペンネーム(由良秀之)で公刊しました。

そのほか、「従軍記者的な司法クラブの報道姿勢の問題」を多くの特捜事件で指摘してきました。今の私にとって、最後のシンポジウムとなったのが、《日本に法と正義を取り戻す会》の【人質司法、メディアに責任はないのか】と題する企画でした。

メディアの問題は 強大な権力を持つ地方自治体の首長との間でも生じますが、兵庫県知事をめぐる問題では、「オールドメディア」と言われた従来メディア批判が、逆に、選挙でのSNSを通じたネットメディアに、異常なまでの影響を生じさせるという新たな現象も起きました。

こうして今、 病室から発信しておきたいことを考えるにあたって、今、日本の社会で起きている重要な事象を、これまで私が行ってきた「 4つの権力との戦い」との関係を整理して私なりに分析し、そこからどういうことが言えるのかを考えてみたいと思います。

まず、昨年秋の衆議院選挙で自民党が少数与党に転落する最大の原因になった「派閥政治資金パーティー裏金問題」です。

これは、「自民党の政治資金の不透明性」という政治権力に関わる問題ですが、それが国民の強烈な不満・反発に繋がったのは、裏金議員の処罰がほとんどできなかっただけでなく、所得税の課税も全く行われず、国民に強い不公平感を生じさせたからであり、それは政治資金規正法違反として検察の進め方に根本的な誤りがあったからであることを、【前掲拙著】で指摘しました。

検察にとって、裏金議員が 収支報告書の訂正で済ませ、納税をしない方が政治資金規正法違反事件の処理上、都合がよかったのです。そのような検察の意向を受け、所得税の納税は全く行われませんでした。

そのような裏金議員の納税への態度、それを、検察の捜査処分を口実に容認してきた自民党は、昨年秋からの3回の選挙で敗北を続けることとなった。それと今、「石破おろし」が吹き荒れる自民党との関係をどう見るか、というのが直近のテーマです。

もう1つ、引き続き社会の関心が非常に高いのが 兵庫県の斎藤元彦知事をめぐる問題です。これは、地方自治体の首長として強大な権力を持つ県知事とメディアとの関係の問題です。

通常は、メディア側が県知事の権力になびくという関係ですが、兵庫県では、元県民局長の告発文書に対して斎藤知事がとった対応、その後、百条委員会が立ち上げられ、元県民局長が自殺をするということになった後、メディア側が全国レベルで斎藤知事の批判追及を行うようになり、県議会での不信任案可決にまで至りました。しかし、失職を選び、再選挙に出馬した斎藤知事をNHK党の立花孝志氏が「2馬力選挙」で支援し、それまでの新聞、テレビ等のメディアを「オールドメディア」と称して徹底批判をし、元県民局長の告発文書や斎藤知事追及に関して隠蔽されていたと称する事実をSNSで流布するなどして斎藤氏を擁護しました。

そこから選挙の情勢が激変し、斎藤氏が逆転裁判しました。その直後に、にわかに表面化したのが、斎藤陣営からPR会社に対してSNS運用をめぐる支払いがあったのではないかという公選法違反疑惑でした。そこで問題は、県知事の権力と、警察・検察の捜査処分という司法との関係に移ることになります。

私は、この斎藤知事らの公選法違反について刑事告発を行ったほか、兵庫県議会百条委員会で斎藤知事を追求する立場にあったもののその後県議を辞職し、死亡した竹内英明元県議に対する立花氏の名誉毀損について、夫人の告訴代理人として告訴を行いました。

この兵庫県の問題の問題についても、まだまだ、私として言うべきことが多くあります。順次発信していきたいと思います。

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