『朝日新聞政治部』著者鮫島浩さんとの対談

興味深かったのは、朝日新聞の中でも、政治部と、社会部の東京地検特捜部を担当する「司法クラブ」に共通性があること、「朝日新聞」という新聞社の組織と「検察」という組織には、かなり共通性があるということです
郷原信郎 2022.07.14
誰でも

元朝日新聞記者で、今年5月に、『朝日新聞政治部」と題する著書を公刊された鮫島浩さんと、YouTube《郷原信郎の「日本の権力を斬る!」》で対談をしました。

本題に入る前に、冒頭で、参院選挙の投票日2日前の7月8日に起きた安倍元首相殺害事件について伺いました。

鮫島さんは、戦前の歴史との比較という観点から話してくれました。

戦前も、政党政治の下での経済政策の失敗から貧富の格差が拡大、テロが多発し、政治が委縮して大政翼賛政治になり、批判勢力がなくなって戦争に向かっていくという歴史があった。安倍政権下での貧富の差が拡大し、社会の分断が進む中、それと同様のことが起きてくることを懸念していたところ、今回の衝撃的な事件が発生した、ということでした。

私も、貧富の格差の拡大、社会の分断が、危険な社会状況になっていくことについては、同様の懸念を持っていますが、今回の安倍氏銃撃事件については、少なくとも、現時点では、「政治的なテロ」だとする根拠はありません。戦前に繰り返された政治目的によるテロと同様のものとイメージだけでとらえてしまうと、それが、戦前と同じような状況を招いてしまう危険もありうるので、そこは慎重に見極める必要があると思います。

そして、本題に入り、鮫島さんが、朝日新聞という「大手新聞社の中枢」にある政治部とはどういう世界なのか、その後、一転して、特別報道部で調査報道に関わってこられたこと、そこで起きた「吉田調書」問題、言論サイト「論座」での“Dr.ナイフ”問題などに話題が移りました。

その中で興味深かったのは、朝日新聞の中でも、政治部と、社会部の東京地検特捜部を担当する「司法クラブ」に共通性があること、「朝日新聞」という新聞社の組織と「検察」という組織には、かなり共通性があるということです。

いずれも、閉鎖的で、独善的、外からの批判を受け付けない、従来からのやり方にこだわり、新しいやり方を拒絶しがちな組織です。

そして、鮫島さんと私は、そのそれぞれの組織で、新たな手法を取り入れようとしたものの組織の上層部に受け入れられなかった、という点でも共通しています。

また、鮫島さんは、朝日新聞の「吉田調書問題」について、問題発生当初から、「批判に対して適切な危機対応ができなかったところに根本的な問題があった」と主張したのに、調査の対象外であったとのことです。一般的に、不祥事における調査では、危機対応の部分はほとんど対象にしないのが実情です。

組織の不祥事における「危機対応」は、コンプライアンス専門弁護士として、私がこれまでいろいろ関わってきたテーマであり、それに関して【企業はなぜ危機対応に失敗するのか】という著書も出しています。そういう意味では、朝日新聞の「不祥事対応」の拙劣さについての鮫島さんの主張と、私の専門分野は交錯します。「吉田調書問題」において鮫島さんの言いたいことは十分に理解できました。

朝日新聞から離れて「一匹狼」となり、「SAMEJIMA TIMES」を立ち上げて、WebサイトとYouTubeでの発信を行っていく鮫島さんは、私と同じように「長い物には巻かれない生き方」をしておられます。

鮫島さんが、独立したジャーナリストとして発信されていくことについて、多くの人からその価値が認められるようになることで、その活躍の場は一層広がっていくと思います。

今後も、折に触れて、いろいろお話をしていきたいと思います。

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