フランス人ジャーナリスト西村カリン氏との対談概要と多くの共感のコメント
日本で20年にわたって特派員として活動を続けるフランス人ジャーナリスト西村カリン氏を、YouTube《郷原信郎の「日本の権力を斬る!」》のゲストとして招いて、9月16日に対談を行い、18日にアップしました。
日本では、国民の間で賛否が分かれている「安倍元首相の国葬の問題」(と言っても、最近の世論調査では「国葬反対」が「賛成」を大きく上回っていますが)について、ヨーロッパ人の視点からの客観的な意見を聞きたい、というのが、対談を企画した目的でしたが、期待以上に、国葬問題のみならず、日本政治の根本的な問題を的確に指摘してくれました。
西村カリン氏の話は概ね以下のような内容でした。
①安倍元総理大臣が殺害されたことはショックだった。理由は2つ。それは、元総理大臣が暗殺されたというのは最近ほとんど例がないこと、もう一つは、日本は安全な国であり、銃で暗殺されることなどあり得ないと思っていたということ。
②テロという言葉は、フランスでは、マスコミは、「捜査当局がテロ事件として捜査すると発表したとき」「テロを実行した組織が声明を出した場合」など、政治的イデオロギーによる犯行だとする根拠がある場合に初めてテロという言葉を使う。そうでなければテロという言葉は使わない。安倍元首相の事件では、フランスの定義ではテロではない。
③岸田首相が、安倍元首相殺害後、国葬を行うことを表明したことについて、フランス人としても、「もう葬式は済んでいるのに、なぜまた葬儀なのか(やるとすれば「追悼式」)」とは思ったが、在任期間が長かった元総理大臣が暗殺されたのだから国葬をやるというのは、その時点ではそれほど不思議には思わなかった。しかし、その後、旧統一教会の問題が海外でも報じられ、安倍元首相についてのスキャンダルも報じられた。日本人が国葬に反対する人が多いということも伝わり、その反対の理由を知ると、海外でも、「その理由なら反対するのも当然だ」と思う人が多くなった。それに、海外の人は、日本では元総理大臣の国葬というのが戦後1回しか行われておらず、今回の安倍元首相の国葬が特例だということは、最初は知らなった。
④統一教会と政治家との関係は、政教分離のフランスではあり得ないこと。フランスでは「ムーン・カルト」と呼ばれ、ネガティブなイメージで見られている。フランスでは、政治家がカルトに関わることは想像できない、あり得ないこと。
⑤フランスでは、元大統領についての国葬は可能。大統領が決定するが、国民の大部分が賛成していることが前提になっている。5割もの国民が反対するリスクがある場合は国葬はやらない。ドゴール、ミッテランなどの元大統領は、生前に国葬を希望しないことを表明していた。
⑥「安倍元首相への海外からの弔意が、日本の国民に向けてのものだったから国葬で弔意に応えるべき」というのは矛盾している。国民への弔意に応えるというのであれば、国民の代表である国会での議論を経て決定すべき。
⑦安倍元首相の国葬に海外からの首脳の参列が少ないこと、G7各国からはカナダのトルドー首相しか来ないというのは、外交の面で意味があるとは言えず、岸田首相にとって誤算だったはずだ。各国の首脳が来ない大きな理由は、統一教会問題などのスキャンダルが出たこと、そのような国葬に参加してメリットがあるのか疑問だと思われたこと、9月というのが年度初めで忙しくタイミングが悪かったこと。なぜ、2か月半も経った9月末にしたのか。海外とやり取りして、国葬のタイミングを決めるべきだった。そのようなやり方は、外交的には「アマチュア」みたいな判断。日本の外交は、もともと強くなかったが、コロナの影響で海外首脳と会う機会がなかったせいか、ますます弱くなった。
⑧岸田首相は、国葬をキャンセルする選択肢があった。フランス人研究者の日本の専門家が、「エリザベス女王が亡くなられて国葬が決定された段階で、反対も多いので安倍元首相の国葬はやめますと言う選択肢があった」と言っている。実際に、エリザベス女王の国葬が行われれば、どうしても比較してしまう。日本にはメリットはなく、デメリットが多い。「国葬はキャンセルすべき」というのが海外の専門家の見方。
⑨自民党の中には国葬をやりたい人が多いのかもしれないが、国のために何が良いのかよくないのか、国民にとって何がよいのかを考えるべき。国葬という単語を使ったことが問題だった。その言葉を使わなければ、そこまで問題にはならなかった。
⑩岸田政権の支持率は危険水準になってしまった。岸田首相は、起死回生を狙ったのかもしれないが、重要なことを決める時に議論が足りない。国会での議論も全くなし、民主主義の基礎を尊重していない。日本では、国民も野党も労働組合も弱いので、そういうやり方がまかり通ってしまう。岸田政権はやり方を変えないと長く続かない。
⑪最大の問題は、今回の国葬のように、政府が議論なしで政策を決定し、それついて説明も十分にできないこと。何度も用意されたメモを読んでいるだけでは説明にならない。「一度も説得力ある説明をしていない」と多くの国民は思っている。ウクライナ戦争、円安が進み、エネルギー価格が上がって、日本人は満足できるのか、普通に生活できるのか。本当に、ちゃんとした政治が必要。
YouTubeで対談を公開したところ、1日で2万を超えるビュー数もさることながら、西村カリン氏に対する共感と感謝のコメント、カリン氏の話を聞いて日本政治の現状を憂うるコメントが、既に100件を超えています。
その中から、いくつかを引用します。
西村カリンさん言われたことは日本人が皆思っていることです 本当に嬉しかったです。ありがとうございました。
西村カリンさん、ありがとうございます。現、日本の権力者、政治家、体制側の、権力の使われ方、言葉、その使われ方の、おそまつさが、クッキリ! フランスの社会、政治とのレベルの、差、が、クッキリ!
国葬について、欧米先進国の良識を日本国民の過半数は共有できるのに、自民党と一部の野党には何故それができないのか?自民党の議員さんは是非この動画を見て欲しい!
こうやって海外の目線で考えさせてくれた今回はとても重要です。バブル崩壊前までは日本の政治家にも良識や矜持というものがあった。しかし現在の政治家&官僚は法に触れなければ、または逮捕・起訴されなければ(その為には検事総長や警察庁長官に影響力を与える)何でもやり放題。国会軽視どころか国民無視、世界から笑われています。
郷原さんのカレンさんを選んだセンスに感謝申し上げます。私は彼女の意見を聞いて、全てにおいて賛同しているのでとても嬉しくなり、また日本が情けなくもあり、泣いたり笑ったりしました。意見を聞いていて、日本の江戸時代から続いているお上ごもっとも、一人の年寄りの固まった意味のない意見を若い首相が断れない(麻生氏の言った国葬を岸田氏が断れない)自民党は、カレンさんの言われるように議会政治ではなく、独裁政治に近い政治をしまくっています。(岸田氏の紙の読み上げ、官房長官の紙の読み上げに終始)ここで民主主義的政治をやろうと議論するのも良いのですが、これからの地方の選挙をはじめとして衆議院選挙にもつなげていき、自民党に投票させない理屈を国民に説得していく以外にないと感じました。衆院まで3年弱ありますが、かえってそれが有利に働くかもしれないのです。それは説得する時間が与えられたと考えるからです。今日の番組は重要なことを挙げてくれましたが、民主主義という基礎的姿勢を国民も議員も忘れるな、日本はもう古すぎて話にならないよとカレンさんが執拗に話されていた正論が心に残りました。フランスが羨ましい。
在仏です。カリンさんのことはいつもTwitterなどでフォローしています。日本ではカリンさんのようなジャーナリストは少なく、また一生懸命に追いかけているジャーナリストには光が当たらないような仕組みになっているとしか思えません。これからもカリンさんを呼んでお話を聞いて頂けると、世界のスタンダードからどれだけ日本が離れているか、世界はどう判断しているのか等、客観的な考え方が出来るのではないかと期待しています!
西村カリン氏の、安倍元首相の国葬をめぐって混乱を極める、民主主義が蔑ろにされている日本政治の現状を、客観的に、なおかつ、熱く語ってくれていることに、多くの視聴者が心を動かされたようです。
この動画が少しでも多くの日本人に視聴され、安倍元首相国葬と旧統一教会問題をめぐる岸田政権の現状がいかに危機的なものか、認識が広がることを期待したいと思います。
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