自分史・長い物に巻かれない生き方⑰
埼玉土曜会談合事件の刑事告発に立ちはだかった検察
郷原信郎
2023.04.05
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1990年4月に公取委に出向した私の最大の仕事は、独禁法の刑事事件の告発に関連するものでした。前号で述べたように、検察は、刑事処罰について、従来からの考え方を基本的に変えず、告発して違反者の処罰を求める立場の公取委の方が、検察の考え方に合わせた物の考え方をして、「検察が食べられる料理」にして来ない限り、告発を受け入れようとはしませんでした。そういう検察の姿勢が、公取委の独禁法違反事件の刑事告発の動きの前に立ちはだかりました。
公取委側は、行政処分のための調査を行った結果、告発の基準に該当すると判断した場合には、公取委の判断で告発を行えば良い、行政処分の延長上で告発を行って、その後、その「刑事事件」をどう捜査して、どう処分するかは検察に任せればよいという考え方でした。
一方、検察の側は、告発して違反者の処罰を求めるのであれば、公取委の方が検察の考え方に合わせ、「刑事事件の規格に合うような事件」として証拠をそろえて事前協議に持って来るべきだという考え方でした。両者の間には、大きな開きがありました。